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第1回先端技術ワークショップ 開催報告

1.はじめに

 ドローンを利用した映像や写真は,もはや目新しいものではなくなってきており,比較的安価な装置で操縦も簡単なドローンの普及によって,この分野の産業は急速に発展している.こうした動きの中で,「空の産業革命に向けたロードマップ」では2020年のレベル4(有人地帯での目視外飛行)の実現に向けて,災害対応,物流,インフラ維持管理,測量,農林水産業等の多くの利用用途での活躍が期待されている.一方で,現在のドローン産業は機体そのものや操縦技術に注目が集まり,それによって得られる最終成果品の品質や特徴が十分に理解されているとは言えない面もある.
 そこで,研究企画委員会では,最先端のドローン技術と同時に,応用地質分野におけるドローンの実際の利用例を紹介し,この技術についての情報の共有と一層の有効利用に向けた討議を行うことを目指し,本ワークショップを開催した.
 ワークショップにおいては,特別講演2編,事例発表3編が報告された.また,講演後にはワークショップ形式で講演者と出席者相互の意見交換が行われた.
 本ワークショップの概要は以下のとおり.

日 時:令和元年8月6日(火)13:00-16:45
会 場:北とぴあ(第二研修室)
参加者:53名(会員36名,学生会員6名,非会員11名)

<特別講演および事例発表>
特別講演@「産業界でのドローンの活躍動向」千葉大学名誉教授
日本ドローンコンソーシアム会長
野波健蔵氏
特別講演A「UAVの活用による災害対応の全体像」日本測量協会認定講師
中日本航空(株)
中舎哉氏
事例発表@「ダムに係る調査におけるドローンの活用事例」(独)水資源機構櫻井宏樹氏
事例発表A「土木工事現場におけるUAVの活用事例」(株)安藤・間早川健太郎氏
事例発表B「環境調査におけるドローンの活用事例
 ―マーシャル諸島共和国マジュロ環礁におけるリーフフラットの調査事例―」
茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター教授桑原祐史氏

2.ワークショップ報告

特別講演@
「産業界でのドローンの活躍動向」
千葉大学名誉教授,日本ドローンコンソーシアム会長 野波健蔵氏
 本講演では,ドローン産業の成長分析,産業分野別の現状と課題,今後の展望について講演いただいた.
 はじめに,ドローン産業の市場規模についてご紹介があった.現状では農業分野の市場規模が最も大きいものの,将来的にはインフラの維持管理や土木・建設分野での市場規模が大きく拡大していくとの推定がなされているとのお話があった.また,産業分野別のドローン活用の現状と課題として,@農林水産,A土木・建築・測量,Bインフラ維持管理,C物流・災害対応の4つの分野毎に,「研究」,「開発」,「事業化」の三段階で導入状況を紹介いただいた.最後に,今後の課題と取り組みとして,官民合同で「空の産業革命」に向けた総合的な検討の取り組み状況を紹介いただいた.今後,機体の安全性や操縦者の技能向上はもちろんのこと,事故時の保険やプライバシーの保護,上空利用のあり方など,産業分野でさらなるドローンの活用を行うための法整備の必要性を述べられた.

特別講演A
「UAVの活用による災害対応の全体像」
日本測量協会認定講師,中日本航空(株) 中舎哉氏
 本講演では,災害調査におけるUAV調査の優位性や,災害対応におけるUAVの活用事例について講演いただいた.
 はじめに,災害発生直後の情報収集手段として,迅速かつ高精度な情報が得られることから,UAVを活用する優位性が示された.続いて,土砂災害現場を中心に,UAVを用いたレーザー測量の取り組み事例が紹介された.この結果,レーザー計測で得られた三次元データは,対策工事の検討・詳細設計にも活用でき有用性が高いこと,短時間で計測データを得られることから,災害活動の基礎資料としても計測データが有効に利用できることが示された.最後に,今後の展望として,災害の規模や範囲,実際の現場状況に応じて,調査手法を選択する必要性,精度の高い情報の取得や調査時の安全管理体制の向上に向けた取り組みの必要性を述べられた.

事例発表@
「ダムに係る調査におけるドローンの活用事例」
(独)水資源機構 櫻井宏樹氏
 本報告では,多大な管理施設の長寿命化を図るべくドローンを活用した調査・点検を行っているものの,とりまとめ方法が統一されていないことに対しての問題が提起され,そのための解決方法として,アンカー工の点検カルテの作成を例に,統一的視点での点検実施に向けた取り組みを紹介された.また,ダム特有の活用事例として,ダム堤体下流面の劣化診断や貯水池周辺崩壊地の概略調査,水中ドローンを用いた水没域調査の現状と課題について報告がなされた.

事例発表A
「土木工事現場におけるUAVの活用事例」
(株)安藤・間 早川健太郎氏
 本報告では,調査,施工計画,施工管理,検査・点検の各段階において,UAVが活用されており,特に,UAVを活用した3次元レーザー測量により,短時間で精度の高い情報を効率よく得ることが可能となったことが紹介された.これらにより,現況を手軽に撮影し,次の作業指示が的確に出せるようになったこと,広大な現場を面的に管理できるようになったこと,測量作業や検査などの現場作業時間が軽減したことがUAVを土木工事現場に導入する上での優位性として紹介された.

事例発表B
「環境調査におけるドローンの活用事例 ―マーシャル諸島共和国マジュロ環礁におけるリーフフラットの調査事例―」
茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター教授 桑原祐史氏
 本報告では,UAVを用いた有孔虫生息域の抽出を目的とし,環礁域における調査事例の報告がなされた.環礁域においては,干潮の影響を受けることから,限られた調査時間で広大な範囲の調査を行う上でのUAVの優位性が示された.また,地形測量や画像解析の結果から,有孔虫の生息域の地形的特徴を効率的に把握することができたことが述べられた.

意見交換 質疑応答・意見交換
 ワークショップ形式による質疑応答・意見交換においては,質問票により予め質問事項を整理したことで,円滑な議論ができた.特に,調査技術や精度,機体や第三者災害に対する保険の有無について議題に挙がり,講演者の回答に対して,フロアから関連の情報が提供されるなど,議論を深めることができた.

参考:開催案内はこちら

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