サイトマップ | プライバシーポリシー | 著作権・免責事項 | お問い合せ | English Site

トップページ学会紹介委員会刊行物会員サービスリンク
学会誌「応用地質」のバックナンバーはこちらから


ニューズリストの登録はこちらから

会長からのご挨拶 ―日本応用地質学会の今後へ向けて―

日本応用地質学会の今後へ向けて

一般社団法人 日本応用地質学会会長

脇坂安彦

プレート境界に位置する日本列島では,安定大陸に比べ,地質分布・構造は複雑で,岩盤の物性も良好とはいえません.このため,構造物を計画・設計・施工・維持管理するための地質調査には膨大な数量を要し,地質分布・構造の解析も困難を極めることが多くなっています.また,プレート沈み込み帯にあるために,地震災害や火山災害も頻発しており,本年(平成28年)4月には,熊本・大分地方で日奈久布田川断層帯を震源とする地震が発生し,甚大な災害となったことは,記憶に新しいところです.過去や現在の火山活動などによって熱水変質を受けた岩石中には,有害金属等が含まれていることがあり,それらの溶出が環境上の問題となっていることもあります.このような地質条件にある我が国においては,地質学の実学部門である応用地質学が各方面において果たすべき役割は非常に大きいといえます.しかし,残念なことに応用地質学が果たすべき役割は大きいのですが,社会的には応用地質学の重要性は,諸先輩や関係者の方々のご努力にもかかわらず,さほど認識されていません.私は,応用地質学が構造物の計画・設計・施工・維持管理にさらに貢献し,減災・防災,環境問題の解決にさらに資するためには,応用地質学の社会的な認知度を向上させ,社会において応用地質学の重要性を認識していただくことが必要だと考えます.

応用地質学の社会的認知度の向上のためには,応用地質学分野全体を統括する唯一の学会である本会の活動をますます活性化させ,本会の存在感を高めることが重要です.そこで,日本学術会議,公益社団法人物理探査学会をはじめとした関連学協会および一般社団法人全国地質調査業協会連合会,一般社団法人建設コンサルタンツ協会などの業界団体との連携による共催行事の開催,災害時の迅速な調査団の派遣など対外活動の活性化を行います.さらに,本会の公益社団法人化へ向けた検討を行いたいと思います.

今後,応用地質学関係者は,業務の場を海外にも求めて行かなければならないと思います.そこで,本会は日本国内はもとより国際的にも認知度を高める必要があります.国際応用地質学会(IAEG)の活動においても貢献し,ひいては本会会員の国際社会における存在感を向上させるため,平成27年度のアジア地域会議の成功を機会に今後も学会としての国際活動を強化していく必要があります.すでに平成28年11月にはベトナム国応用地質学会と本会の共催でThe 3rd International Conference VietGeo2016が開催されることとなっています.さらに国際活動強化のための方策を考えたいと思います.

さて,本会の内部に目を向けてみますと,本会の個人会員と賛助会員の会員数は,平成14年度の2629名・社を頂点にその後,減少を続け,平成27年度末には1941名・社と平成14年度の約7割になっています.この会員の減少は,本会にとっては財政面ほか様々な面において深刻な問題です.学会活動を活性化させるためには,これ以上の会員の減少を防止する必要があります.このため,個人会員向けおよび賛助会員向けの様々なサービスの向上を図りたいと思います.

具体的には,まず,魅力ある学会誌「応用地質」の企画を考えたいと思います.「応用地質」の基本的な役割は,会員の研究や業務の成果を論文・報告などとして掲載することです.掲載された論文・報告等は,掲載内容に関連した研究・業務を行っている会員以外には,直接的には役に立ちにくいという問題があります.そこで,毎号,全会員に目を通していただける学会誌「応用地質」とするため,「応用地質」を従来の論文・報告等の会委員の研究・業務成果を掲載する論文・報告誌の部分と会員の応用地質全般の知識の習得に寄与する会誌の部分とに区分し,後者を充実させたいと思います.たとえば,各研究部会が中心となって応用地質学の基本となる事項の解説の連載などです.

次に会員向けの講習会・講座などを充実させたいと思います.大学の地質学関連学科の卒業生は,応用地質学に関する知識や経験の習得は独学か,各機関が教育を行ってきたのが実情です.他方,近年の社会情勢下,各機関による教育はきわめて困難となってきているようです.単独の機関では実施しがたい応用地質学に関する社会人教育を学会が担う必要があります.すでに平成27年度から応用地質学教育普及委員会によって,「応用地質技術入門講座」が開始されていますが,今後さらに応用地質学教育普及委員会,事業企画委員会および各研究部会の連携による経験の浅い会員向けの種々の分野の入門講座としての講習会,各世代の会員向けの講習会を実施したいと思います.

本会の定期的な行事としては,毎年6月頃開催のシンポジウムおよび10月頃開催の研究発表会があります.これらの行事は会員間の交流ができる数少ない機会ですが,参加者は200〜300名前後で,会員数に比べ,多いとはいえません.また,参加者は固定化しているようにも見受けられます.シンポジウムは毎年,特定テーマを取り上げますので,それに関連する会員以外には関心は薄く,参加者も限られるのは仕方がないことだと思います.一方,研究発表会では,応用地質学のあらゆる分野のセッションが設定されており,各会員の関心のある発表が必ずあるはずです.研究発表会に参加された会員におかれましては,研究発表会および意見交換会が有用であることを職場の会員の方々,特に若い会員の方々に是非お伝えいただき研究発表会への参加をお薦めいただきたいと思います.また,積極的に発表もしていただきたいと思います.

応用地質学の社会的認知度の向上のためには,地域との関係も重要です.各支部においては地域に密着した活動もすでに種々,実施されてきているところですが,今後さらに各地域との関係を深めていただきたいと思います.

以上,述べて参りました方針以外にも,地質関連学科卒業生の最も多くを受け入れている応用地質学を代表する学会として,今後の応用地質学および本会の歩むべき道をさらに考えて参りたいと思います.上記の方針は理事会を中心に検討・実行して参りますが,わずか23名の理事のみで,達成できるものではありません.是非とも本部,支部所属の会員の皆様に積極的に学会活動にご参加いただき,以上の方針の達成にご協力頂きたいと存じます.今後の方針および歩むべき道につきましてご意見がございましたら,私や理事の皆さん,委員会・研究部会の委員の皆さんへお伝えいただければと思います.