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火山地域における応用地質学的諸問題に関する研究小委員会

概要

1.設立の背景と目的

火山は平穏な時にはその美しい地形美で我々を魅了し、また温泉や地熱などの恵みも多く与えてくれる。しかし、この恩恵は火山の地下にあるマグマが地表やその付近に上昇することによりもたらされるものであり、マグマの上昇は噴火に至る場合もある。そして火山が噴火すると、甚大な被害を及ぼすことがある。我が国日本は島弧-海溝系に位置する弧状列島であり、世界の約7%にあたる110の活火山が分布する世界でも有数の火山国である。日本はこのような火山国でありながら、火山山麓を含めて鉄道、道路、電力設備などのインフラが発達し、多くの人々が生活しているとともに、火山活動にともなう温泉や火山活動により形成された地形の造形美を観光資源として毎年多くの観光客が訪れている。また、火山帯周辺に賦存する地熱をエネルギー資源として、また火山活動にともなって地殻浅所にもたらされた各種元素を鉱物資源として活用している場合も多い。さらに現在の火山活動の影響だけではなく、過去の火山活動に伴う噴出物や火山性堆積物が我が国には広く分布し、過去の火成活動に伴う熱水による変質作用を被った地質も多く認められる。
 我が国は明治維新以降、急速に産業が発達し、第二次大戦により壊滅的な状況となったものの、戦後の復興、高度成長期を経て現在まで世界有数の産業レベルまで成長している。この間には火山体周辺を国立公園化して環境、景観を保全するとともに、その縁辺では活発に開発がすすめられ、例えば第四紀火山の山麓や新第三紀火山岩の分布域での新幹線トンネルの建設や高速道路網の整備、地熱発電などが行われている。
 我が国において明治以降今日までは、歴史的にみても火山活動が非常に静穏な時期であったと言われており、このような火山の恩恵を活かした社会活動が進められてきた。しかし、1990年からの雲仙普賢岳の噴火では43名の方々が犠牲となるとともに、島原半島のインフラや社会生活に多大な被害を及ぼした。2000年の有珠山の噴火では周辺の道路や鉄道などで被害が生じ、洞爺湖温泉街の人々全員が避難することとなった。さらに2011年の東北地方太平洋沖地震以降、国内においては蔵王、箱根、西之島、霧島、桜島、口永良部島など火山活動が活発化しており、2014年御嶽火山の噴火により63名の方々が犠牲となった災害は記憶に新しい。
 このように我が国は、これまでも火山の恵みを活かした社会活動を行ってきたうえに、火山災害への対応と防災対策についても実績が多数あり、このような火山地域における応用地質学的な諸問題に対して的確に対処してきた数少ない国といえる。上記のように、今後日本では活発化するであろう火山活動を念頭に、建設事業、防災対策ならびに環境保全事業などの社会活動を進める必要があるとともに、過去の火成活動の影響を正しく応用地質学的に評価したうえで各種事業を合理的に進めるための考え方を確立する必要がある。このような火山地質の観点からの応用地質学的な研究活動は、諸外国、特にこれから発展が見込まれ、かつ日本と同様に環太平洋の変動帯に位置し火山が多く分布する東南アジア諸国、さらには世界に対して、これまでの経験を活かした国際支援をより可能なものとし、日本の応用地質学の国際的プレゼンスを高める絶好の分野、機会であると考えられる。
 以上のことから、今後の我が国における火山地域での開発や火山災害への対応のみならず、諸外国の火山地域における開発と環境・景観保全に対して、応用地質学的な問題点を抽出・整理し、応用地質学会として長期的な視点をもって検討し、国際的にも貢献できる課題を設定するための研究活動を行うことを目的として、「火山地域における応用地質学的諸問題に関する研究小委員会」の設立する。

2.活動予定

本小委員会では、主に以下の課題について研究活動を進める。

  1. 地質調査法とその新技術
  2. 長期的な噴火予測・評価
  3. 火山防災
  4. 建設工事とリスク評価
  5. 地下水・環境問題
  6. 資源・エネルギー利用
  7. 市民活動
  8. その他

3.活動期間

平成28年度~平成30年度(3年間)

4.設立趣意書

構成メンバー(2019年4月時)

委員長

太田岳洋(山口大学)

顧問

長谷川修一(香川大学)

幹事

小坂英輝(環境地質)

委員

井口隆(防災科学技術研究所),伊藤久敏(電力中央研究所),上原祐治(応用地質),梅田浩司(弘前大学),大塚智久(八千代エンジニヤリング),奥野充(福岡大学),清崎淳子(CROSS-ENGINEERING),阪上雅之(国土地理院),辻智大(山口大学),中司龍明(長崎地研),宮原智哉(アジア航測)

研究小委員会活動記録

委員会

  • 第 1回(2016年11月21日),第 2回(2017年 2月28日),第 3回(2017年 5月22日),第 4回(2017年 9月15日),
  • 第 5回(2017年12月19日),第 6回(2018年 4月17日),第 7回(2018年 7月 9日),第 8回(2018年10月17日),
  • 第 9回(2019年 4月24日),第10回(2019年 6月20日),第11回(2019年10月25日),第12回(2021年 2月22日),
  • 第13回(2021年 3月25日)

現地見学会

  • 第 1回現地見学会(2017年09月16日) 九重火山

【視察状況】左:小松地獄の変質帯の観察、右:八丁原地熱発電所の視察

巡 検

  • 火山地域の応用地質学的諸問題に関する研究小委員会 2023年11月 7日(火)巡検案内のお知らせ

ポスター発表

  • (一社)日本応用地質学会 平成30年度研究発表会(2018年10月16日~17日) 6編   
  • 火山地域における建設工事における応用地質学的問題   
  • 火山の第四紀年代学   
  • 火山地域での地質災害の評価でのテフラ編年学の役割:阿蘇カルデラの例を中心に   
  • 火山体の斜面調査手法   
  • 火山地域における資源・エネルギ―の応用地質学的アプローチ   
  • 火山災害の継続期間からみた火山との共生へ向けたアウトリーチ活動