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令和4年度定時社員総会およびシンポジウム

研究発表会案内 令和4年度定時社員総会およびシンポジウムを下記の要領で開催いたします.奮ってご参加くださいますようお願いいたします.
 新型コロナの影響が続いていることが予測されるため,オンラインを主体としたハイブリッド形式を基本といたします(新型コロナの影響で参集が難しい場合にはオンラインのみの開催となる場合があります).
 Facebookからも情報を発信いたします.

日時

令和4年6月17日(金)
10:00〜12:00 定時社員総会
13:00〜17:00 シンポジウム

会場

【会場】貸教室・貸会議室 内海 3F教室(収容人数80名)(水道橋)
https://www.kaigishitsu.co.jp/guide/3f.php
【開催形式】ハイブリッド形式
 聴講者はオンライン参加を基本としますが、とくに現地での参加を希望される方は学会事務局(office@jseg.or.jp)までお知らせください。現地参加を希望された場合においても、会場の人数制限によりご希望に添えない場合がありますので、ご了承ください(オンライン参加の人数について制限はありません).

定時社員総会

総会資料は事前配付し,質問を事前受付する形で実施します.会場には数名の代議員に参集していただく予定です.総会の模様は,WEBにて公開しますので,当学会員であれば総会を傍聴することができます.

シンポジウム

テーマ:「気候変動対策と応用地質」

後援

日本地熱学会
公益社団法人日本地下水学会
公益社団法人物理探査学会
公益社団法人日本地すべり学会

シンポジウム参加費(予稿集代を含む)

正会員/名誉会員:3000円、学生会員:1000円、非会員:4000円、学生非会員:2000円
後援学会(日本地熱学会、日本地下水学会、物理探査学会、日本地すべり学会)の会員の方につきましては、正会員価格といたします。
ハイブリッド開催のため,事前申込といたします.予稿集はWEBよりダウンロードしていただく形式といたします.

CPDH

3.5時間(シンポジウムを聴講の場合)
※CPD受講証明書の発行を希望された方につきましては、後日、証明書を郵送いたします。オンライン開催のため、シンポジウム開催中のWEB会議(Zoom)へのログイン情報を確認の上、発行いたします。

プログラム

1.シンポジウム開催の趣旨

 近年、地球温暖化によるとされる豪雨等異常気象やこれに伴う土砂災害が頻発し、温室効果ガス(CO2)の削減による気候変動対策が課題となっており、再生可能エネルギーの導入促進、温室効果ガスの吸収対策などが注目されているところである。このような社会情勢を踏まえ、今回のシンポジウムでは、応用地質分野と関連が深いと思われる気候変動対策技術の研究や技術動向を紹介し、応用地質分野の貢献について考えてみたい。
 今回シンポジウムでは、再生可能エネルギーのうちベースロード電源として期待されている地熱資源調査の技術開発動向や課題、再生可能エネルギーの利用効率促進において期待される電力エネルギーの貯蔵に関する技術、CO2の回収・貯留に関する地下貯留技術動向を取り上げる。

2.プログラム

シンポジウム「気候変動対策と応用地質」
13:00〜13:05 開会の挨拶:環境地質研究部会副部会長 竹村貴人(日本大学)
 第1部 特別講演
13:05〜13:50 特別講演1「超臨界地熱資源−島弧地殻の描像と地殻流体−」
  土屋範芳(東北大学大学院環境科学研究科 教授)
13:50~14:35 特別講演2「地熱発電と周辺環境」
  安川香澄(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 地熱事業本部 特命審議役)
14:35~15:20 特別講演3「二酸化炭素地中貯留に関する地質評価技術」
  及川 透(日本CCS調査 地質調査部)
 第2部 話題提供
15:30〜15:50 話題提供1「新しいCAESによる再生可能エネルギーの電力貯蔵」
  中川加明一郎(元 電力中央研究所)
15:50〜16:10  話題提供2「二酸化炭素循環型地熱発電の開発に向けて」
  末永 弘(電力中央研究所)
 第3部 パネルディスカッション
16:20~16:55 テーマ「気候変動対策と応用地質」
  座長:環境地質研究部会委員 清ア淳子(クロスエンジニアリング)
  パネリスト:特別講演者・話題提供者
16:55〜17:00 閉会の挨拶:環境地質研究部会部会長 舩山 淳(パシフィックコンサルタンツ)

実施報告

実施概要

近年,地球温暖化によるとされる豪雨等異常気象やこれに伴う土砂災害が頻発し,温室効果ガス(CO2)の削減による気候変動対策が課題となっており,再生可能エネルギーの導入促進,温室効果ガスの吸収対策などが注目されているところである.このような社会情勢を踏まえ,今回のシンポジウムでは,応用地質分野と関連が深いと思われる気候変動対策技術の研究や技術動向を紹介され,応用地質分野の貢献について講演および討議が行われた.また,再生可能エネルギーのうちベースロード電源として期待されている地熱資源調査の技術開発動向や課題,再生可能エネルギーの利用効率促進において期待される電力エネルギーの貯蔵に関する技術,CO2の回収・貯留に関する地下貯留技術動向が取り上げられた.
 当日は163名と多くの皆様にご参加をいただき,ありがとうございました.各講演の概要は以下のとおりです.詳細は特別講演およびシンポジウム予稿集としてまとめられています.是非ご一読いただけたら幸いです.予稿集の購入に際しては学会事務局までお問い合わせ下さい.

特別講演1「超臨界地熱資源-島弧近くの描像と地殻流体-」

東北大学 土屋 範芳

本講演では,地熱発電の現状の課題を世界の動向と日本の現状を比較して説明された.特に,太陽光や風力に比べて設備容量は低くなっているが,地熱発電の稼働率は7倍であり,再生可能エネルギーの中でも発電量はそれなりに重要な位置を占めている.また,最近10年間の地熱開発の停滞について「日本の地熱開発の失われた10年」として,国の施策としての地熱政策の後退と予算の激減を反映しているとされた.
 日本の地熱地質の特徴として,地質単元は比較的小さいが,高温の地熱地帯は数多くあることに加え,今後の地熱発電のフロンティアとして,深度2,500〜3,000mにある,超臨界領域の開拓が必要であることが述べられた.
 超臨界地熱資源の開発のためには,地球の内部構造と地殻流体科学の研究が重要であり,東日本弧の沈み込み帯における研究事例が紹介された.研究では,地熱資源は熱資源であるとともに水資源であることを,エネルギー資源としての島弧-沈み込み帯のプロセスの中で説明され,超臨界域では誘発地震のリスクが小さく,地熱量が大きいことが示された.
 最後に超臨界地熱資源の具体的な有望地として湯沢・栗駒山麓西部の地下深部が発見され,今後の開発がNEDOのプロジェクトとして進められている.

特別講演2「地熱発電と周辺環境」

石油天然ガス・金属鉱物資源機構 安川 香澄

本講演では,地熱発電と自然環境との関係について,大気汚染,生態系や景観への影響,地下水理システムへの影響の観点から,国内外の取り組み事例や研究事例を交えながらご講演をしていただいた.
 大気汚染に関しては,地熱発電所から排出されるガスの内,最も問題になるのは,硫化水素(H2S)や二酸化炭素(CO2)であるが,拡散シミュレータを用いた事前予測でより環境に優しい開発が可能になったとのお話があった.また,分離したCO2ガスが植物の育成促進やドライアイスの製造に利用されている事例を紹介された.
 生態系や景観への影響については,発電所地上設備をアースカラーで統一するなどの工夫や生態系への影響を減らすための取り組みに関して海外の発電所の事例も交え紹介された.
 地熱開発による温泉への影響については,温泉の地化学特性に基づき区分された5つのタイプにより推定が可能であり,適切な事前調査とモニタリングによって,影響を回避することができるとの説明があった.地熱貯留層と温泉帯水層とのつながりを調べるのが重要であること.また,モニタリングに地化学特性の把握が重要であるとのお話があった.
 最後に,地域の環境に合った地熱開発が大切であること,社会環境への影響はアイディア次第で良くなると述べられた.

特別講演3「二酸化炭素地中貯留に関する地質評価技術」

日本CCS調査 及川 透

本講演では,二酸化炭素(CO2)を含んだガスの回収・地中貯留技術(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)について,現在事業が進められている二酸化炭素貯留適地調査事業及び苫小牧CCS実証実験についての報告が行われた.
 貯留適地調査事業では3D/2D弾性波探査データ取得や,地質解析・シミュレーションなどを用いた詳細貯留ポテンシャル調査を実施している.CO2を安定的に貯留するには,十分な貯留能力やCO2が漏出しない地質構造となっているなどの条件が求められている.わが国では地質構造の複雑さから,詳細な地質構造を把握するためには面的情報が広く得られる3Dデータが有効であり,また,岩石の浸透率が低いことから調査井における試験が重要であるとのご説明であった.
 これまでの調査結果では,3Dデータを用いて評価した11地点において貯留可能量が160億トンと算出された.貯留可能量未算出の箇所においてはデータの追加によりさらなるポテンシャルの可能性があるなど,貯留地点数,貯留可能量とも相当の貯留ポテンシャルがあると見られている.しかし,2021年度末の時点で調査井は未掘削であり,最終段階である貯留適地総合評価まで至っている地点はない.精度の高いシミュレーションの実施には調査井から得られる直接的なデータが必要であるとのことであった.また,評価で使用した海底地形判読・海底地質情報のコンパイル,堆積相解析,貯留可能量評価,調査井掘削前CO2挙動予測シミュレーションの事例を紹介していただいた.
 最後に,北海道苫小牧市で行われているCCS実証実験の紹介があった.2019年に目標だった30万トンの圧入を終え,現在はモニタリング中であるが,これまでのモニタリングや海洋環境調査における影響は報告されていない.本実証実験では萌別層(砂岩)を圧入対象層としているが,堆積相解析結果からは良好な貯留層の分布を把握できたとのことであった.

話題提供1「新しいCAESによる再生可能エネルギーの電力貯蔵」

中川 加明一郎(元 電力中央研究所)

近年の再生可能エネルギーの大量導入に伴い,大規模な電力需給調整システムが求められている.本講演では,大規模な電力貯蔵が可能であり,同期発電機能を有するエネルギー貯蔵システムとして,地下岩盤を利用したCAESについてご紹介いただいた.CAESとは,Compressed Air Energy Storageであり,圧縮した空気を密閉空間に貯蔵し,そのエネルギーを発電に利用する技術であり,ドイツとアメリカでは実用化に成功しているとのことである.新しいCAES(A-CAES)は,ガスタービンの燃焼に圧縮空気を利用する従来のCAES-G/Tとは異なり,圧縮空気の力を膨張タービン出力に変換するシステムとのことである.我が国の地下岩盤中に高圧・高温の圧縮空気貯槽を建設するには,空洞建設コストの低コスト化や地質に応じた貯槽形式の提案等が土木分野での課題となるものの,各種電池と比較しても低コストな大規模電力貯蔵システムとして期待されることが紹介された.なおCAESについては,中川(2021)にも紹介されています.興味のある方はぜひご参照ください.
参考文献
中川加明一郎(2021)連載シリーズ再生可能エネルギー(7)電力貯蔵‐圧縮空気エネルギー貯蔵,応用地質,第62巻,第1号,23-29.

話題提供2「二酸化炭素循環型地熱発電の開発に向けて」

末永 弘(電力中央研究所)

本講演では,CO2を地熱の抽出媒体として利用するCO2循環型地熱発電システムについて,その概念とシステムを模擬した室内実験,数値解析の結果が紹介された.本システムは,高温環境下に掘削した坑井(同軸方式,クローズドループ方式)もしくは坑井と岩盤の割れ目(オープンループ方式)を介してCO2を循環させ,抽熱を行うものであり,本システムが成立することにより,地熱発電の立地拡大,熱水が得られず廃止された地熱井の有効活用等が期待されるとともに,超臨界CO2を利用する発電システムは蒸気タービン系よりも比出力が大きいことから発電設備の小型化などのメリットがあるとのことである.一方で,システムは理論的な検討はされているが,実証には至っていないとのことである.そこで講演者らは,CO2を利用した地熱増産システムおいて数値解析の結果から提唱されているサーモサイフォン現象,すなわちCO2の温度変化に対応した密度の変化に伴いポンプの動力を必要とせずにCO2が自然循環する現象を,室内実験レベルで実証したことが紹介された.また,水とCO2の岩盤・坑井内での流動を模擬できる数値解析手法を構築し,地熱地点の岩盤モデルに適用することで,オープンループ方式においてより多くの熱量が得られることが紹介された.

パネルディスカッション:テーマ「気候変動対策と応用地質」

座長:清ア 淳子(クロスエンジニアリング)

パネルディスカッションは,特別講演者の土屋氏,安川氏,及川氏,話題提供者の中川氏,末永氏をパネリストとして迎えて実施した.ディスカッションで地熱開発に関連して応用地質分野に期待することについて,さまざまな観点から数多くの意見が出された. (発言要旨)
・大局的にみれば,概ね100年ごとに基幹となるエネルギーの転換期が訪れている.2050年頃にはこれまでとは違うエネルギーの時代が訪れ,社会システムが変わるのではないか.その時代には,エネルギーに価値を見出す社会になるのではないかと考えられる.
・「エネルギー=電気」ではなく,熱に注目するべきであり,地熱地帯に限らず,温度が一定の地下の熱利用を考えるべきである.排熱を地下に貯留する場合にどういった地下利用をするのかといった議論において応用地質分野の活躍があると考えられる.
・2050年にCO2排出ゼロを達成するためには,排出量を地球に戻す必要があり,その方法の一つとしてCCSがある.現地での実験において,シミュレーションやジオメカニクスの検討,計測,解析が重要で,応用地質分野に関わってくると考えられる.
・再生可能エネルギーにおいて調整必要な電力量は,揚水式水力発電所において考えた場合,神流川発電クラスが20〜23箇所必要な試算となる.このような例から考えてもエネルギーの貯蔵が重要で,応用地質分野に関わってくると考えられる.
・地熱開発は,石油・天然ガスと比較すると,調査においてそこまでコストをかけられない.同じコストでの調査精度の向上が求められる.石油・天然ガス分野で培われた探査技術を低コスト化して地熱開発に活かすことが応用地質分野に求められることと考えられる.
・地熱利用の話は,古くて新しいテーマであり,今後の社会生活に大きくかかわってくると考えられる.

(文責:事業企画委員会 宮原智哉,森山哲朗,赤澤正彦,田中姿郎,石濱茂崇)

問い合わせ先

日本応用地質学会事務局
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2-3-14 お茶の水桜井ビル 7F
 一般社団法人日本応用地質学会
 TEL:03-3259-8232 FAX:03-3259-8233 E-mail:office@jseg.or.jp