サイトマップ | プライバシーポリシー | 著作権・免責事項 | お問い合せ | English Site

トップページ学会紹介委員会刊行物会員サービスリンク
学会誌「応用地質」のバックナンバーはこちらから


ニューズリストの登録はこちらから
ニューズリストの登録はこちらから
ニューズリストの登録はこちらから

平成27年度 定時社員総会およびシンポジウム

日時

ポスター
シンポジウムポスター〈拡大〉

平成27年6月12日(金)
11:00〜12:00 定時社員総会
13:00〜17:40 特別講演・シンポジウム
18:00〜    意見交換会(会場:柏キャンパス内「プラザ・憩い」,会費:5000円)

会場

柏キャンパスまでのアクセス

東京大学柏キャンパス 新領域環境棟FSホール(予定)
千葉県柏市柏の葉5-1-5
柏キャンパスへのアクセス(東京大学ホームページ)
つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅から東武バス(西柏04または西柏03)東大前または東大西停留所下車
※会場には駐車場がありませんので,公共交通期間をご利用ください

定時社員総会

総会の構成員は役員および代議員ですが,当学会員であれば総会を傍聴することができます

シンポジウム(一般社団法人日本応用地質学会・公益社団法人物理探査学会の共催)

テーマ:「土木地質図の信頼性に関する課題と対策 ―物理探査の活用による土木地質調査の信頼性向上と効率化に向けて−」

参加費(予稿集代を含む)

日本応用地質学会と物理探査学会の会員は,正会員3,000円,学生会員2,000円を予定

CPDH

5時間(シンポジウムを聴講の場合)
CPDの登録にはジオ・スクーリングネット(https://www.geo-schooling.jp)をご活用ください

プログラム

1.シンポジウム開催の主旨

土木地質調査は国土の開発・管理において最も基本的な調査の一つである。しかしその重要性が開発・管理関係者に十分に理解されていないこと、また時には地質技術者の技術力の不足から、調査量不足や不適切な調査方法および調査結果の解析・評価に起因する建設費用の増大、施工時の事故、構造物の不安定化等のいわゆる地質リスクがしばしば発生している。
 このような地質リスクを回避するためには、基本的に信頼性の高い土木地質図や地質工学モデルを作成することが要求される。この要求を満たすためには、さらなる物理探査の活用、新しい調査技術の活用、地質構成・分布の複雑性に応じた調査数量の最適化による的確な地質調査の実施、適切な地質解釈等による解析・評価精度の向上が不可欠である。また、土木地質図の信頼性、言い換えれば不確実性を国土開発や管理に関係する発注者や設計者等に的確に伝達することも重要である。
 土木地質図は地質技術者にとっての「商品」であり、その品質確保や取り扱い説明は地質技術者が自ら取り組むべき義務である。そこで本シンポジウムでは、土木地質図の信頼性に焦点を当て、その現状、課題およびその対策について事例調査等から明らかにするとともに、物理探査の活用による土木地質調査の効率化、信頼性向上策について議論する。

2.プログラム

招待講演
13:00-13:50 「土木地質調査における物理探査の貢献」
物理探査学会 前会長 茂木 透(北海道大学)
特別講演
13:50-14:40 「土木地質における岩盤のモデル化とその留意点」
日本応用地質学会 土木地質研究部会顧問 脇坂安彦(前 土木研究所)
シンポジウム
14:50-14:55 趣旨説明
日本応用地質学会 土木地質研究部会長 佐々木靖人(土木研究所)
第1部 土木地質調査の信頼性と課題、改善策
14:55-15:15 @土木地質調査の課題と標準化に向けて
日本応用地質学会土木地質研究部会幹事 西柳良平(株式会社建設技術研究所)
15:15-15:35 A山岳トンネルにおける地質調査の課題と改善に向けて
日本応用地質学会土木地質研究部会課題事例分析WG長 片山政弘(株式会社熊谷組)
15:35-16:00 B重力式コンクリートダムの基礎掘削面における地質分布及び岩級区分の調査精度に関する検討
日本応用地質学会土木地質研究部会ダムWG長 綿谷博之(株式会社建設技術研究所)
第2部 物理探査と土木地質調査の連携による効率化・精度向上
16:00-16:10 C土木地質調査が物理探査に望むこと
日本応用地質学会土木地質研究部会長 佐々木靖人(土木研究所)
16:10-16:35 D物理探査の品質確保と適用上の留意点
物理探査学会会長 斎藤秀樹(応用地質株式会社)
16:35-17:00 E大規模地すべりと緩み岩盤における物理探査の適用
物理探査学会理事 三木 茂(基礎地盤コンサルタンツ株式会社)
第3部 総合討論
17:10-17:40 総合討論司会・総括:日本応用地質学会副会長 大塚康範(応用地質株式会社)

実施報告

実施概要

平成27年度シンポジウムを公益社団法人日本物理探査学会と共同開催いたしました.約215名の多数のご参加をいただきありがとうございます.各講演の概要は以下のとおりです.詳細は特別講演およびシンポジウム予稿集としてまとめられています.是非ご一読いただけたら幸いです.予稿集の購入に際しては学会事務局までお問い合わせ下さい.

招待講演

「土木地質調査における物理探査の貢献」

物理探査学会 前会長 茂木 透(北海道大学)

 今回は,「統合物理探査」をkey-wordにした,物理探査の現状ならびに今後の課題等について,写真や図表等を豊富に用いたご講演であった.
 導入では物理探査の役割,それを効率的に果たすためにはどのように調査を行い,効率化を図るかという点についてご説明頂いた.調査結果の解釈のためには弾性波速度や比抵抗値等と岩石や土の物理的性質との関係を検討し十分理解することが必要であり,さらに設計や施工に必要な諸情報の推定には対象に応じた適切な手法を採用,複数の調査手法を用いること,ボーリングや現位置試験と協調した一連の統合調査の重要性を説かれた.
 一方で,過去事例のデータベース化を進め,解釈や解析技術を向上させること,手法の標準化を進めることの重要性についても強調されていた.

特別講演

「土木地質における地盤のモデル化とその留意点」

日本応用地質学会 土木地質研究部会顧問 脇坂安彦(土木研究所)

 講演の冒頭,土木構造物の計画・設計・施工・維持管理における土木地質の果たす役割と責任の大きさが強調された.
 土木地質では地質リスクの抽出および物性値の3次元分布把握のために地盤をモデル化する.地盤のモデル化は,通常の純粋な地質図を作成する過程に相当する構成地質および地質構造のモデル化と,地盤物性のモデル化とに大別される.講演の前半ではとくに後者についてその基本が解説された.
 講演後半では,地盤のモデル化における課題と改善策が提示された.課題としては,観察者の知識,経験等に依存する観察の理論負荷性,モデル化の精度,地質解釈の不確実性が挙げられた.改善策としては,調査範囲および調査精度を段階的に変えていくような系統的な地質調査の実施,地形調査の活用,高品質な地質調査の実施などが示され,物理探査の活用もその一つとして挙げられた.物理探査の活用に関しては,本シンポジウムでの活発な討論に期待が寄せられた.

シンポジウム講演

@土木地質調査の課題と標準化に向けて

日本応用地質学会土木地質研究部会幹事 西柳良平(株式会社建設技術研究所)

 本報告では,土木地質調査全般の課題と今後の標準化に向けた検討について,応用地質学会土木地質研究部会におけるアンケート調査による検討結果,および,海外の標準化事例についての検討結果について話題提供をいただいた.
 アンケート結果等から導かれる課題として,各事業段階で地質情報の不確実性についての認識が共有化されていないことや一時的な調査データの品質が重要であることが強調された.また,土木地質調査の標準化の方向性として,楽観的な土木地質モデル(施工時の設計変更で対応)でも,悲観的な土木地質モデル(過大設計で堅牢なものを作る)でもなく,適切な設計・施工を行うための土木地質調査が必要であり,そのための社会一般に広く理解され裏マニュアル等の標準化が必要であることが強調された.

A山岳トンネルにおける地質調査の課題と改善に向けて

日本応用地質学会土木地質研究部会課題事例分析WG長 片山政弘(株式会社熊谷組)

 課題事例分析WGが実施したアンケート調査の分析結果をもとに,山岳トンネルにおける地質調査の課題や改善案について報告があった.
 アンケートでは回答者の所属別に意見の相違が見られるものの,多くの技術者は調査数量が少ないと感じ,地質縦断図は参考程度と見ているとの分析結果が示された.アンケートの自由意見では,「調査数量,項目の基準への要望」「地質調査精度の向上策」「技術者のレベル向上策」「組織の改善策」に関する意見が多く寄せられ,それらに対する検討結果が提示された.特に意見が多かった「地質調査精度の向上策」では,地形判読,地表踏査,ボーリング,物理探査,地質実績の整理における課題と改善案が提案された.その他,三者会議や切羽(岩盤)判定会議への参画が「技術者のレベル向上策」として期待できるとの考えが提示された.

B重力式コンクリートダムの基礎掘削面における地質分布及び岩級区分の調査精度に関する検討

日本応用地質学会土木地質研究部会ダムWG長 綿谷博之(株式会社建設技術研究所)

 竣工ダム12事例のダム基礎掘削面の地質分布および岩級区分について,調査段階の想定と施工段階の実績を比較し,その調査精度(一致率・調査密度)を検討した.地質分布の一致率については,地質タイプの内,付加体の堆積性メランジュで低い結果であった.岩級区分の一致率については,完全一致率と安全側一致率の関係から,2つのグループに区分され,安全側一致率の低下要因として,共役系の小規模な断層や想定外の高角度断層の分布が挙げられる.また,調査ボーリングの調査密度が高い場合でも,高角度の劣化部の把握に対して鉛直ボーリングのみでは限界があることから,物理探査の適用により,調査初期段階において劣化部を抽出することへの期待が大きいことが述べられた.

C土木地質調査が物理探査に望むこと

日本応用地質学会土木地質研究部会長 佐々木靖人(土木研究所)

地質の不均質性等により,正確な土木地質図の作成が困難となる場合の,物理探査の有機的な有効活用について,ダムにおける事例を中心に話題提供して頂いた.
 物理探査は,広範囲,非破壊,面的,定量的に把握できるという利点がある一方,精度や地質・物性の推定方法の不明確さ等の課題がある.これらを踏まえ,物理探査に期待される事項(ニーズ)として,問題地質の検知や地質構造の把握(岩相分布,断層・破砕帯等の存在,分布等),力学特性・力学的な物性値分布の把握(岩級区分,強度・変形性の分布等)が挙げられる.
 しかしながら,実際は「とりあえずやってみる」という無機的な活用が多く,物理探査の有機的な活用方法の体系化には,地質技術者と物理探査技術者が連携し,発注者,事業者の理解を得て,物理探査を計画段階から取り入れ評価するシステムが必要である.

D物理探査の品質確保と適用上の留意点

物理探査学会会長 斎藤秀樹(応用地質株式会社)

 物理探査の解釈を誤ってしまった事例から,物理探査の品質が,技術者の資質・力量にゆだねられているという課題を提起いただき,その解決策について話題提供いただいた.
 まず,物理探査の資格認証制度がない問題に触れ,品質確保のためには信頼できる業者が差別化されるべきである点が指摘された.観測計器の知識不足,解析技術の不足など,技能不足を補うために,基準,ガイドラインの整備,セミナーの開催など,物理探査学会の取り組みについて紹介があった.また,弾性波探査を例に,走時曲線の基本的な見方,チェックのポイントなど照査の手法についても言及された.最後に,物理探査の品質が確保されていることを仕様に求めるなど発注者に取り組んでいただくことが重要であり,これを最大限に生かすことができる地質技術者の存在がより重要である点が強調された.

E大規模地すべりと緩み岩盤における物理探査の適用

物理探査学会理事 三木 茂(基礎地盤コンサルタンツ株式会社)

 物理探査結果の解釈は,定性的・経験的な要素が多く含まれている.本講演では弾性波トモグラフィの結果から深度-弾性派速度のプロット図を作成し,健全な岩盤の深度に伴う弾性波速度の増加の傾向と比較することで,斜面の移動層・ゆるみ範囲をより客観的に判定する方法が提案された.今後,物理探査の結果がデータベース化されれば,さまざまな岩相に対応した健全な岩盤と移動層・ゆるみ岩盤を判別するプロット図が作成できると思われる.そのためには,物理探査の結果が電子納品されること,探査の品質が確保されていることが必要との考えが述べられた.

総合討論・総括

司会・進行:日本応用地質学会副会長 大塚康範(応用地質株式会社)

 総合討論は時間の都合上,司会の大塚副会長が設けた「1.土木地質調査の信頼性向上に向けた現状と課題」,「2.信頼性向上に向けた物理探査の課題と新技術の紹介」という副題について,各講演者からそれぞれの題材について提言する形で進められた.「副題1.」については、土木地質調査段階での物理探査の品質確保の必要性・物理探査の役割・活用時期等について意見が交わされ,調査・事業段階毎に評価することが必要との提言がなされた.「副題2.」については,土木地質技術者・物理探査技術者への技術的教育の必要性について意見が交わされ、高品質で信頼性が得られる成果を作成するには,両学会が協力して技術者教育を実施できる機会を設けることが必要との提言がなされた.最後に今後の取り組みとして,両学会の技術者の技術力向上のための勉強会の開催や物理探査を含めた調査手法の標準化等の指針の作成が必要という認識が示された.

(文責:事業企画委員会 上野,長谷川貴,宮原,兼松,森山,橋本,松浦,田中)