日本応用地質学会東北支部 JSEG TOHOKU
 

 平成29年5月19日(金)
平成29年度 日本応用地質学会東北支部
総会・特別講演  当日の様子
 去る5月19日(金)に日本応用地質学会東北支部の平成29年度総会・特別講演会・討論会が無事終了いたしました。本年度の予算・活動計画、役員人事が承認され、新たな年度のスタートを切ることができました。

 せんだいメディアテーク7F スタジオシアターにてPM1:30から定刻通り開会いたしました。
以下は当日の簡単なレポートです。
 
1.総会
 総会は出席数(参加人数:44名、委任状:80名)となり、「日本応用地質学会東北支部規定」第15条の正会員(支部会員数名180名[平成28年3月末日現在])の5分の1以上の出席となり、本総会は成立いたしました。

 議事次第に従い、平成28年度活動報告ならびに会計報告、平成29年度活動計画および予算案、支部役員人事案が可決されました。本年度は、6月には岩盤分類技術講習会が、そして7月には支部研究発表会、そして10月には「ジオ散歩仙台」と称した一般向けの催しを計画しており、盛りだくさんの計画となっております。また本年度の現地研修会は現在検討中ですが、10~11月ごろに予定しております(場所も未定)。そのほか、各研究ワーキングも進行しております。
 さらに5月28日~6月1日の予定で、「熊本地震関連調査団」を結成し、若手技術者の技術向上を目的とした調査団を派遣いたします。調査団の結果等については、今後研究発表会等で報告していきたいと考えております。
   
2.特別講演
 特別講演は、岩手大学理工学部の大河原准教授をお招きし、「平成28年台風第10号により岩手県で発生した土石流、崩壊の特徴と崩壊土砂の活用について」と題してご講演していただきました(参加者70名)。  
  昨年に発生した台風10号の経路や降雨量や被害の概要から、土石流や斜面崩壊の発生状況および発生メカニズム、そして発生土砂の有効利用やさらに災害廃棄物の処理や活用方法など多岐にわたる内容の講演でした。
 台風10号のその経路の特性からくる集中した豪雨の状況を時系列的にご説明いただき、土石流や斜面崩壊の被害に至る経緯の詳細を知ることができました。また、被災してからの道路等の応急復旧の速さは特筆するものがあるとのことでした。
 土石流や斜面崩壊のタイプや発生状況については、現在詳細を検討中とのことでしたが、土石流タイプが最も多く、それに次いで斜面崩壊が多いとのことで、地すべりについてはかなり少なかったとのことでした。雨の降り方や地形・地質条件などによるのでしょうか。地質との関連に関しては、現在検討中とのことで、今後さらなる成果を期待したいところです。
 土石流の堆積物の特徴としては、発生メカニズムの違いにより、その堆積物が異なることを述べられ、今回の災害では特に小石混じり土砂状のものが大多数を占めて旨をご説明いただきました。土石流により運ばれた渓床堆積物の粒度やX線分析から、土砂には細粒分(粘土鉱物)が少なく岩盤起源のシリカやカルシウムが多い結果が出たそうです。ただし、細粒分を多く含む土石流もあり、特にそれらは大規模な崩壊から発生している場合が多いとのことでした(風化層が厚いため)。
 土石流の発生や土砂の状況だけでなく、それらの堆積物の有効活用(路盤材への転用)、また、もっと広く自然災害で発生する災害廃棄物の処理・利用方法などにも言及されていました。
 改めて、昨年の台風災害の大きさ・特異性を知ることができ、発生~事後対応~応急復旧~調査・対応~災害廃棄物の処理方法に至る一連の流れをリアルな経験を交え伺う良い機会となり、今後の業務や学会活動の参考となるご講演でした。
3.討論会
 特別講演の後には討論会として、支部役員を中心として4編の話題提供をし、「災害調査に応用地質学はどのように取り組むか」というタイトルで討論いたしました(司会:橋本(智)幹事)。参加者は68名と多くの皆さんにご参加いただきました。
 新田幹事からは、特別講演と同様の台風10号災害での土石流2渓流での現地の状況や発生源の状況を報告していただきました。沢の特徴や地質状況など説明していただきました。災害発生直後1か月後での調査ということで生々しい現地の状況をうかがい知ることができました。
 
司会の橋本(智)幹事(左)、話題提供する新田幹事(右)
   橋本(修)顧問からは、2013年8月9日の秋田・岩手豪雨での供養佛地区の土石流崩壊についての概要を報告していただきました。現地の水力発電所との関係や地形・地質の状況と土石流の発生状況の関連など興味深い内容でした。
 村上幹事からは、特別講演でも話題に上がったUAV(Unmanned Aerial Vehicle)による調査方法の事例を報告指定いただきました。初動調査への有用性や、UAVを使用する上でのリスクなどお話しいただきました。比較的新しい技術であり、リスク管理や価格など参加者が特に興味を示していたのが印象的です。
 最後に高見支部長からは、今後の人材育成・災害現場への対応についての重要性を挙げ、今月末に出発する「熊本地震災害調査団」の意義についてお話しいただきました。
 会場からは、それぞれの話題提供へのご質問やご意見をいただきました。
 
話題提供する橋本(修)顧問(左)と村上幹事(右)
4.意見交換会
  総会・特別講演終了後場所を移動し、スマイルホテル内のシュルブール仙台店にて意見交換会を行いました(参加者35名)。特別講演をしていただいた大河原先生にもご参加いただき、参加者と多くの議論や意見を交わすことができたのではないでしょうか。また、最後には熊本調査団の参加者へのエールを送り、村上幹事による「伊達の一本締め」で会を締めました。
 

 

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